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最終巻のハイタッチ

last update Last Updated: 2025-04-25 20:01:07

シュウゥゥゥ……。

火の球パス練習の時と同じように、ケイロの手がボールを捕った刹那に炎の柱は消え、白煙が吹き出す。

そして何事もなかったのようにドリブルを始めた。

「その調子だ太智! もっと遠慮せず俺にぶつけてこい!」

周囲には真意が分からない、俺たちだけで通じる内容。

……どんどんやれってか。ボール取り損ねたら大ケガするっていうのに……あと名前呼びになってんぞ。こんな大勢いる中で……ったく。

まあ今までの試合を観てるヤツなら、別におかしく思わないか。

自画自賛だけど、戦闘を抜きに考えても俺らの息ピッタリだし。

試合の中で友情が芽生えたっておかしくないもんな。

……本当は夫婦なんだけど。

試合中盤から、俺たちの間だけで作戦が変わった。

「行くぞ、百谷ぁ――っ!」

声をかけながら、強く念じて炎の柱をバンバン出しまくりながらケイロにパスを出す。心は抑えない。テンション上げまくって、試合の攻防の高揚感も利用して、超強火な魔法を連発した。

ケイロは涼しい顔して俺の火力増し増しパスを、うまく手元で鎮火して新たに手頃な火を灯す。

こうしていけば一気に魔物を払うことができるから、俺たちは積極的にボールを取りに行った。

さらに小まめなパスを増やして、次々と魔物を一掃していく。

パスカットでボールに指先が触れる際も呪文を小さく素早く唱えて、ファウルボールすらコート外の控え魔物たちへの攻撃に変えた。

終盤になるとケイロだけじゃなく、俺のプレイでも歓声が上がるようになる。

どうもボールを奪いに行く俺の気迫と執念が、観客に受けているらしい。

そりゃあ必死だからな。俺が脅威と認定されたっぽく、魔物たちは積極的に俺にも攻撃するようになったし。

がむしゃらにボール持って、炎で攻撃しまくって、試合運びなんてもう考えられない状態になってた。

そして――ピィィィィッ! ゲーム終了の笛が鳴る。

我に返って周囲を見渡せば、いつの間にか魔物たちの姿は消えていた。

「ハァ、ハァ……あ、得点は?」

乱れ

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    ◇◇◇休み明けの授業中。期末テストが近いと分かっていても、授業の内容は頭に入って来なかった。ケイロの国に力を与えている百彩の輝石。その輝石を守りたい。国のためにならないからと盗んだマイラット。少し話を聞いただけでも、輝石を奪われたことが国の一大事だとは分かるし、王子のケイロが直接乗り込んでくるほどのことなのも理解できる。でも悠の話が本当なら、どうして国のためにならないんだ?輝石を守るって、マイラットってヤツは何から守りたいんだ?国家転覆の陰謀とか、国の威信とか、王家の裏事情とか……そんな漫画やラノベな世界とは一切無縁な一般高校生の俺。あれこれ考えて真実を見つけ出すなんてまずできない。ムリ。期末テストで赤点回避するだけで精一杯な頭だし。考えても無駄――って分かってるのに、それでも頭が勝手に働いてしまう。ケイロたちはマイラットの意図は知ってるのか?もし悠から聞いた話をしたら、何か前進するか?……でも悠からは、自分のことを言わないでくれって頼まれてるしなあ。悠が協力者だって分かったら、容赦しないだろうなケイロは。魔法で自白は通常運転だろうし、マイラットをおびき寄せるために、悠を利用するかもしれない。一緒に昼食を取る仲でも、たぶんケイロはやる。だって国の一大事だから。親友を追い詰める真似はしたくない。けれど、このまま放置はできない。一回、マイラットから話が聞けるといいんだけどな。あっちの事情が分かったら、もしかしたら何か状況が変わるかもしれない。知らないから困るんだよ。うん。誤解の元だ。俺は巻き込まれちゃった第三者だから、当事者じゃない分だけ怒らずに事情は聞けるし、もしマイラットが悪いヤツで何か仕掛けてきたら遠慮なく倒せるし……俺が密かに動くしかないよな。うーん、これって内助の功になっちまうのか?ケイロのことを考えて動こうとすると、全部夫婦絡みな感じがしてならない。な

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   百彩の輝石の力

    ◇◇◇夜になっても俺がベッドでゴロゴロしていると、「やっていることが昼間とまったく変わってないな、太智」なんの前触れもなくケイロが部屋に入ってきて、俺はビクッと肩を跳ねさせる。「急に入って来るなよ! せめて一声かけてくれ。親しき仲にも礼儀ありって言うだろ!? お前だって俺が不意打ちで部屋に来たら困らないか?」「驚きはするが、歓迎するな。お前から積極的に夜這いへ来てくれるのだからな、喜んで相手をするぞ」「なんでもかんでも夜の営みに繋げるなぁ……どうしてこんなにヤりまくってるのに、まだ身の危険を感じなくちゃいけないんだよ」筋肉痛を全身へ響かせながら体を起こした直後の問題発言に、俺はベッドの上でうな垂れる。そして密かにケイロが部屋へ来た途端、いつも通りの空気になったことを驚く。昼間に悠から教えてもらった話を延々と考えて、ついさっきまで引きずって胸が重たくなっていたのに。あっという間に元の調子を取り戻して、何事もなかったようにやり取りできてしまう。まだ出会って二か月が経過するかしないかの期間なのに、もう夫婦の空気が板についている。ケイロについて知らないことが山ほどあるっていうのに……。俺は頭を掻きながらケイロに尋ねる。「今日はどこへ行ってたんだ? もしかして、あっちの世界?」「ああそうだ。面倒なことに定期的に報告しなくてはいけなくてな……奪われた百彩の輝石は、我が国にはなくてはならない秘宝。早く取り返さなくては、これからの行事や国の大事にも影響が出てくる」「百彩の輝石ってそんなにすごいものなのか?」ケイロたちがこっちに来た目的の、百彩の輝石。さり気なく尋ねてみると、ケイロは小さく頷いた。「ああ。遥か昔、精霊王が親愛の印にと祖先へ贈ったものらしい。それを覇者の杖にはめ込めば、その杖を手にした者はすべての精霊を使役し、あらゆる魔法を可能にする」「魔法使いの最強装備じゃねーか。そりゃあ持っていかれたら困るよな」

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   それだけでいいのかよ!?

    『あー、ムリムリ。三日に一度は中に出されないとダメなんだぞ? 体も頭もおかしくなるって』『え……? 三日? 中に出されるって……?』『え? 悠は違うのか?』『僕は……一週間に一度、キスしてる。舌を絡め合う濃厚なやつ』思わずスマホの画面を見ながら俺は固まる。そして動揺任せに素早く文字を入力した。『はぁぁ? それだけでいいのかよ!』『それだけって……ベロチューだよ!? しっかり唾液飲まなくちゃいけないんだよ!?』『俺のに比べたらかなりマシだから、それ! 時間かかんねぇし、体に負担もかからねぇし、キスなら挨拶みたいなもんって割り切れるし!』『割り切れないよ! あんな濃厚なの、雰囲気出されながら丁寧に毎回されたら……』悠の困惑が伝わってきて、不意に保健室で指輪を見せてきた時のことを思い出す。巻き込まれたのに、相手と夫婦であることを受け入れていた――俺と同じだ。悠の本心が分かって、俺はため息をついた。だよなあ……ベロチューでも意識しちまうよなあ。そりゃあ中に出されちゃったら、意識するどころじゃなくなるよなあ……。思わず遠い目をして現実逃避しかかった俺を、ピロリン、と返信の通知音が引き止める。『太智は何をされたの?』『口では言えないスゴいこと……察して。頼む』『あ……え、最初から?』『最初から。もうお婿に行けない』『どうしてそんなことを……そこまでしなくてもいいのに』頭の片隅でチラついていた疑問を悠に書かれ、俺の中の戸惑いが一気に膨らむ。抱かなくても良かったのに、なんで嘘までついて俺を抱いた?今はちゃんと両想いで、心が伴っている。昨日あれだけ確かめ

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